PIC Programmer 5 の作り方


 おなじつくるなら満足のいくものをつくろうと、アルミのケースに入れました。基板むきだしのままだと、私の机の上が電線の切れっぱしや金属片、ねじのたぐいでいっぱいで、PICライタ使用中にショートする危険性もありますし、それに、家で飼っている5ひきの猫がいたずらをしたりするからです。

[ケースを加工する][回路図を書く][プリント基板をつくる][部品表][はんだ付け][組み立て][動作テスト][PICの挿入位置][注意]

ケースを加工する

 順番が逆のようですが、ケースの加工のほうからはなしをすすめます。ケースは、タカチ電機YMシリーズの薄型アルミケースYM−115を使用しました。W115ミリ、H20ミリ、D80ミリのものです。実際の穴あけ加工は、プリント基板ができてからにしました。というのは、さきに穴あけをしても、はんだ付けの加減などでLEDなどの部品がきれいにケースの穴におさまらない可能性があるからです。ですから、プリント基板ができてから、プリント基板にあわせてアルミケースに穴をあけます(もちろん、部品をはんだ付けする前に作業をおこないます)。プリント基板には、LEDとZIPソケットの穴を加工するための小さなガイド穴をあけておきます(Pcbeで書いた基板のパターンには、ZIPソケットの外形の四隅内側に小さな穴を配置し、LEDの2本の足の間にも小さな穴を配置してあります。LEDの足の間隔は通常は2.54ミリなのですが、倍の5.08ミリにしてあります)。スライドスイッチの穴は、基板のスイッチの足の穴をガイドにしてアルミケースに穴をあけ、あとでやすりなどで穴をひろげていきます。いわゆる「現場あわせ」という手法です。ケースの加工図はここです。部品表を追加しました(2月22日)。

  穴あけは、プリント基板ができてからにします。基板をアルミケースのカバーに重ねて固定し、まず、基板固定用の穴をあけてネジで固定してから、基板のLEDの足の間に位置決め用のガイド穴をあけ、その穴にそってアルミケースのカバーにLEDの穴をあけます。ZIPソケットの穴も同様に加工します。ZIPソケットの穴は、下穴にそってけがき、糸のこでソケットの外形よりすこし小さめに切りぬき、あとでやすりなどで実物にあわせて整形していきます。スライドスイッチの穴は、基板のスライドスイッチの足の穴にあわせてアルミケースに下穴をあけ、やすりなどで実物にあわせて穴を広げていきます。D-Sub 9ピンのソケットの穴は、ソケットの寸法にあわせてケースカバー側面にあけます。ソケットの一部がアルミケースのシャーシにあたるので、シャーシの一部を切りとっておきます。

 追加説明 あとで気がついたのですが、プリント基板ができる前でも、プリント基板のパターンのフィルムをつかってアルミケースに加工できますね。それと、ケースの加工図のカバー上面の穴あけの寸法は、5号機完成後、ノギスではかったものなので、記載された寸法でそのまま加工しないようにお願いします(2003年2月20日)

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回路図を書く

 Pcbeをつかって頭のなかにある回路図をもとにプリント基板のパターンを書きました。そのパターンから回路図もPcbeをつかって書きました。ZIPソケットの結線図は、パターンをもとにテキストエディタで書きました。それらは、私が使用したアルミケースとSunhayatoのポジ感光基板10K(75ミリ×100ミリ×1.6ミリ)にあわせてあります。Pcbeファイルは、ここです。アルミケースを使用しない場合は、パターンを変更してLEDの足の穴の間隔を通常のものにせばめるといいとおもいます。スライドスイッチも、気に入ったものに変更すればよいとおもいます。

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プリント基板をつくる

 今回、はじめてプリント基板づくりに挑戦しました。

 Pcbeで作図したパターンを、OHP用紙にエプソンのLP−9100で印刷しようとしたのですが、PcbeはPostScriptプリンタへの出力は対応していないようです。それで、エプソンのインクジェットプリンタPM−830Cで印刷したのですが、パターンの黒インクの部分にむらがどうしてもでるようです。何回印刷してもおなじなので、プリント基板を現像したあとにパターンをレジストペンで修正することにしました。

 基板の露光時間は、卓上蛍光灯スタンドをつかって山勘で15分にしました。現像してみると、パターンが青くきれいにでてきました。しかし、予想通り、インクのむらのある部分から紫外線が透過したようで、GNDまわりのパターンの青さにむらがでていました。これをレジストペンで修正して、つぎはエッチングです。

 エッチングは、エッチング液の容器をそのまま50℃くらいのお湯につけてあたためておき、それをプラスチックのバットにいれて、それを45℃くらいのお湯をはった洗面器にうかべておこないました。温度は、デジタル温度計をつかって適温かどうかをチェックしました。エッチングはうまくいきましたが、エッチング液の主成分は塩化第二鉄です。やはり鉄は重いので、洗面器のお湯にうかべたバットが、手をはなすと転覆しそうになるのです。このままでは手が離せない。これは今後の検討課題です。

 エッチングがおわってから、家庭用スポンジたわしに家庭用クレンザーをつけて基板を研磨し、水でよくあらってからヘアードライヤーで乾燥しました。そして、すぐ穴あけにかかればよかったのですが、フラックスがみつからなかったのでレジスト(はんだマスキング剤)をさきに塗ってしまったのです。これがおおきなまちがいでした。はんだ面のレジストは、カッターナイフですぐにはがせるのでなんの問題もないのですが、プリント基板にミニルータをつかって穴あけをすると、ドリルの切りくずがレジストにこびりついてしまい、ものすごくよごれてしまったのです。さらにそのきりくずを取り除こうと、アルコール系のクリーナーをつかって基板をふくと、レジストが溶けて、切りくずとよけいになじんでまざってしまったのです。プリント基板の写真をお見せできないのは、そのためです。きれいに仕上げようとして、ひじょうにきたなくなってしまったのです。今後のために反省点とします。

 穴あけは、上述のケースを加工するで紹介したとおりです。基板はミニルータで穴あけ加工したのですが、ZIPソケットの穴を40個、きれいに整列して基板面に直角にあけるということがポイントです(わたしは、老眼鏡をかけて目をこらしてドリル穴をあけたのですが、穴が一直線にならんでいませんでした。さらに、すこし斜めにあいた穴もありました。その結果、はんだ付けするときにZIPソケットの40本の足を基板に装着するのに、たいへん難儀しました。ルータで穴をすこしずつひろげたり、ピンセットでソケットの足をすこしずらしたり……)。つぎに、基板をアルミケースのカバーに固定し、基板取り付け用の穴を四隅にあけて基板をネジでカバーに固定し、それからZIPソケット、LED、スライドスイッチのガイドの穴をあけました。それから、プリント基板をケースからはずし、ガイド穴にそってケースに穴あけ加工をしていきます。

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はんだ付け

 部品のはんだ付けは、ジャンパ線、抵抗、ダイオード、LED、スライドスイッチ、ZIPソケットというように、背の低い部品からおこないます。ZIPソケットの内側にくるジャンパ線は、被覆電線をつかってはんだ付け面の角ランドににつけます。そうしないと、40ピンのICソケットの場合は基板面とのあいだに空間があるからいいのですが、ZIPソケットは基板面とのあいだに空間がないので、基板の表側にジャンパ線をもってくると、ZIPソケットにあたってしまうからです。ZIPソケットの外側にくるジャンパ線は、基板の表側に配線します。LEDは、穴に差し込んでからリード線をペンチなどでひっぱり、ケースカバーからLEDの頭ががうまくでるように高さを調節してはんだ付けします。LEDは20ミリアンペアの3ミリ径のものをわたしはつかいました。抵抗は、小型のカラー抵抗をつかいます。LEDの電流制限抵抗は、最初は1kΩをつけていたのですが、少々暗い感じがしたので、いつかならったオームの法則で計算して、670Ωぐらいでいいだろうとしろうと判断、取り替えた結果、満足のいくあかるさになりました。LEDを買うときは、定格電流とか電圧とかパーツ屋の陳列棚にはかかれてありますが、買って帰ってくると、どのLEDもおなじにみえます。しろうとには外観でみわけがつきません(上級者の方はどうされているのかな?)。それでわたしは、オームの法則で適当に計算し、適当な抵抗をつけて、LEDに実際に電流を流してみて、気に入ったあかるさになるように微調整しながら抵抗をつけるようにしています回路図のほうは670Ωですが、パターン図のほうを先に描いたので、パターン図のほうの電流制限抵抗は1kΩになっています…3月15日補足

 それから、40ピンのZIPソケットを買うときは、PIC16F84やPIC16F873のような、DIPのリードの対向ピッチが7.62ミリ(300ミル)のPICも挿入できるように、ユニバーサルタイプ(ダブルタイプ)のものをえらびます。ユニバーサルタイプ(ダブルタイプ)のものは、PIC16F877のようなリードの対向ピッチが15.24ミリ(600ミル)のPICと7.62ミリ(300ミル)のPICの両方を挿入できます。わたしは、パーツ屋でZIPソケットをはじめて買うときに、正直いっていろいろな種類のものがおいてあったので、値段も高いし、まちがって買ってしまったらどうしようと、悩んでしまいました。それから、ZIPソケットを基板にはんだ付けするときは、ソケットのカムレバーをおこして、コンタクトをオープンにしてからはんだ付けしたほうがいいようです。わたしは、4号機のZIPソケットをユニバーサル基板にはんだ付けするとき、レバーをたおしてコンタクトがしっかりしまったままはんだ付けしたのですが、コンタクトに溶けたはんだが流れ込んだらしく、ソケットのレバーをたおすとき、かなりかたくなって、コンタクトの間隔もふぞろいになってしまいました。

JタイプのZIPソケット(まちがって買いそうに…)
ユニバーサルタイプ(ダブルタイプ)のZIPソケット(これを買いました)

 余談ですが、いちどまちがえて、LEDが手でさわれないほど発熱してこわれたことがあるのです。定電圧ICの7805なんかも、入力と出力のピンをまちがえてはんだ付けしたことがあって、電流を流すと、焦げ臭いにおいがするので、ICにさわると、やけどしてしまいました。電源装置の、電源を切ってからなのですが、あやまって電解コンデンサに素手でふれて、感電したことがあります。また、ペルチェ冷蔵庫の電源も、おなじように電解コンデンサにあやまってめっき線がふれて、2台もこわしてしまいました。8ピンのPICをICソケットから無理にはずそうとして力をいれたところ、PICがソケットからはずれて、こんどはわたしの指にささって8つの穴をあけ、指先から出血しました。電子工作とはいえ、やけど、けが、火災など、十分に注意してあたらなければならないという教訓です。

 電解コンデンサは、はんだ付け面のランドに寝かしてつけます。トランジスタも穴に差し込んでからはんだ付け面に寝かせます。アルミケースを使用しない場合は、電解コンデンサもトランジスタも基板の表面につけることができます。そのさい、エミッタ、コレクタ、ベースの足をまちがえないようにします。

 D-Sub9ピンのコネクタ(オス)と基板を数センチ程度の被覆電線でつなぎます。基板のピン番号とコネクタ内部に小さな文字でかかれている番号のピンとを接続すればだいじょうぶです。

組み立て

 組み立ては、基板をアルミケースにおさめ、ケースのカバーと基板をネジでとめ、D-Sub9ピンのコネクタを5ミリの六角のネジ付きスタッド(スペーサ)で固定して終了です。基板とアルミケースのすきまは、3ミリ程度にします。当初は5ミリのスペーサでいけると考えたのですが、実際に組み立ててみると、ZIPのレバーを倒してPICを固定することができませんでした。それで、1ミリ厚のポリカーボネート製のワッシャが手元にあったので、3枚かさねてスペーサにすると、レバーがうまく倒れるようになりました。

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動作テスト

 動作テストは、PIC12F675、PIC16F84A、PIC16F873、PIC16F877でおこないました(その他のデバイスは、手持ちの関係でテストしておりません)。ライタソフトは、IC-Prog 1.05aでおこないました。日本語化パッチがROCさんによって公開されています。動作テストの方法は、適当なhexファイルをIC-ProgでPICに書きこみ、ベリファイがOKだと、いったんIC-Progを終了させてからIC-Progを再起動し、PICのメモリの読み出しをおこない、ちゃんと書きこまれているのが確認できたら、PICのメモリを消去し、ブランクチェックしました。PICに書きこむときに注意することは、ヒューズの設定です。わたしは、PIC16F877のLVPモードをONにし、コードプロテクトもONにしたままかきこんでしまい、そのPICがブランクのまま二度と使えなくなってしまいました 訂正します。わたしの勉強不足だったようです。デバイスを消去すると、書きこむことができるようになりました。LVPモードやコピープロテクト、それにWRTなどの機能について、データシートをみながら勉強中です。コードプロテクトとWRTとは、組み合わせによって書きこみも読みだしもできなくしたり、書きこみはできないが読みだしはできるようにしたり、いろいろできるようですが、まだそんな機能をつかうところまで勉強がすすんでおりません…2003年5月15日)。それと、PICをZIPソケットに挿入するときは、念のためにPICライタをシリアルケーブルからはずしておくようにします。また、PICをZIPソケットに挿入する前に、スライドスイッチの選択が8ピン/18ピン側になっているか、それとも28ピン/40ピン側になっているか、挿入しようとするPICとあっているか、確認します。

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ZIPソケットへの挿入位置

 ZIPソケットへのPICの挿入位置は、スライドスイッチを適切にあわせたことを確認してから、下図のようにおこなってください。28ピンのPICでプログラムの読み書きや消去でエラーがでるばあい(FENG3がテストしたデバイスでは、28ピンの18Fシリーズでエラーがでました)は、下図のようにジャンパ線(赤色)をソケットの11番と32番のコンタクトに挿入してください(2003年11月24日追加)。

PIC12F675の挿入位置です。
PIC16F84Aの挿入位置です。
PIC16F873の挿入位置です。エラーがでるときはジャンパ線(赤色)を挿入します。
PIC16F877の挿入位置です。

 このPICライタで製作したはじめての作品は、PIC16F84Aをつかった自宅の玄関のドアロックです……かんちがいました。ドアロックは4号機でつくりました(2月18日訂正)。ペルチェ冷蔵庫もそうですが、まったくのしろうとが改造するにはたいへんな勇気がいりました。猫は番犬のかわりにはならないし、保安上のこともありますし、第一、停電したりPICがこわれたらどうやって家に入るのか……。いまのところちゃんと使えておりますが、そこらへんのこともふまえて、何ヶ月かうまく動きつづけているようでしたら、ドアロックも公開しようと思います。

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注意! このPICライタは、動作を保証するものではありません。また、このホームページに記載されている他のペルチェ冷蔵庫、ドアロックについても、けが、やけど、火災、空き巣・窃盗など保安上、防災上の危険性とこれを回避する配慮と対策が必要ですので、自作される場合は十分に考慮してから自己責任でおこなってくださるよう、お願いします。

(2003年2月13日)